Works実績紹介
【地域文化・教育】南三陸の鹿子躍を、つくって踊りながら学ぶ鹿角型被り物
宮城県文化振興財団様からご依頼を受け、地域芸能アウトリーチ「南三陸で生まれた行山流水戸辺鹿子躍とわたしたち」の授業で使用する、紙製の鹿角型被り物を企画・構造設計しました。南三陸町立志津川小学校の子どもたちが、地域に受け継がれてきた鹿子躍(ししおどり)の歴史や意味を学び、自分の角を自由に飾り、最後には身につけて踊る。その一連の体験を支えるための教材です。弊社は、授業の目的や進行を踏まえ、子どもたちが扱いやすく、一人ひとりの表現を加えられる形を考案しました。
1. プロジェクトの背景と企画
南三陸町指定無形民俗文化財の「行山流水戸辺鹿子躍」は、一度途絶えた歴史を持ちながら、地域の人々の手によって復活し、受け継がれてきた郷土芸能です。本プロジェクトでは、子どもたちが実際の装束を間近で観察し、鹿子躍が生まれた地域の暮らしや歴史、踊りに込められた意味を学びました。そのうえで、「なぜ人は鹿になって踊ったのか」を考え、最後には自分たちの鹿子躍をつくって踊る、全3回の授業が行われました。被り物は、本物の装束を小さく再現するためのものではありません。見る、知るという学びから、実際に鹿になって身体を動かす体験へ移るためのきっかけとして企画しました。
2. 企画・設計のポイント
実際の鹿子躍を印象づける大きな角と鹿の輪郭を、子どもたちが授業で扱いやすい、シンプルな紙の構造へと整理しました。装着したときに顔を覆いすぎず、子どもたちの表情を見せながら踊れる形としています。白を基調とした被り物には、テープなどで自由に装飾できる余白を設けました。全員が同じ形から制作を始めながらも、色や模様の加え方によって、それぞれ異なる「自分の鹿」に仕上がります。完成した形を与えるのではなく、子ども自身が手を加える余地を残すことで、鹿子躍を身近に感じ、自分のこととして考えられる教材を目指しました。
3. 授業での活用と生まれた学び
授業の最終回では、子どもたちが自分で装飾した被り物を身につけ、行山流水戸辺鹿子躍保存会の方々による太鼓のリズムに合わせて踊りました。実際の鹿子躍の動きを思い出しながら、友達と輪をつくり、それぞれの身体で地域の踊りを表現しています。被り物を身につけることは、子どもたちにとって「鹿子躍について学ぶ」状態から、「鹿になって踊る」状態へ気持ちを切り替えるきっかけとなりました。自分らしく飾る楽しさと、身体を動かす体験を通じて、地域芸能を遠い過去のものではなく、自分たちの暮らしにつながる文化として考える機会が生まれています。包装資材の企画・設計で培ってきた、紙を立体化し、使う人の行動まで考える構造設計の知見を、地域文化を伝える教育用ツールに生かした事例です。
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